若鷲の歌
一 |
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若い血潮の 予科練の |
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七つボタンは 桜に錨 |
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今日も飛ぶ飛ぶ 霞ヶ浦にゃ |
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でっかい希望の 雲が湧く |
二 |
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燃える元気な 予科練の |
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腕はくろがね 心は火玉 |
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さっと巣立てば 荒海越えて |
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行くぞ敵陣 なぐり込み |
三 |
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仰ぐ先輩 予科練の |
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手柄聞くたび 血潮が疼く |
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ぐんと練れ練れ 攻撃精神 |
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大和魂にゃ 敵はない |
四 |
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生命惜しまぬ 予科練の |
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意気の翼は 勝利の翼 |
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見事轟沈 した敵艦を |
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母へ写真で 送りたい |
九段の母
一 |
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上野駅から 九段まで |
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勝手しらない じれったさ |
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杖をたよりに 一日がかり |
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せがれ来たぞや 会いに来た |
二 |
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空をつくよな 大鳥居 |
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こんな立派な おやしろに |
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神と祀られ もったいなさよ |
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母は泣けます うれしさに |
三 |
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両手あわせて ひざまづき |
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拝むはずみの お念仏 |
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あっと気づいて うろたえました |
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せがれ許せよ 田舎者 |
四 |
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鳶が鷹の子 産んだよで |
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今じゃ果報が 身に余る |
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金鵄勲章が 見せたいばかり |
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逢いに来たぞや 九段坂 |
軍艦行進曲(軍艦マーチ)
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守るも攻むるも黒鐵(くろがね)の |
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浮かべる城(しろ)ぞ頼(たの)みなる |
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浮かべるその城(しろ)日(ひ)の本(もと)の |
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皇國(みくに)の四方(よも)を守(まも)るべし |
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眞鐵(まがね)のその艦(ふね)日の本に |
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仇(あだ)なす國(くに)を攻(せ)めよかし |
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石炭(いわき)の煙(けむり)は大洋(わだつみ)の |
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龍(たつ)かとばかり靡(なび)くなり |
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彈(たま)撃(う)つ響(ひび)きは雷(いかづち)の |
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聲(こゑ)かとばかり響(どよ)むなり |
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萬里(ばんり)の波濤(はとう)を乘り越えて |
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皇國(みくに)の光(ひかり)輝かせ |
同期の桜
一 |
貴様と俺とは 同期の桜 |
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同じ兵学校の 庭に咲く |
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咲いた花なら 散るのは覚悟 |
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みごと散りましょ 国のため |
二 |
貴様と俺とは 同期の桜 |
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同じ兵学校の 庭に咲く |
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血肉分けたる 仲ではないが |
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なぜか気が合うて 別れられぬ |
三 |
貴様と俺とは 同期の桜 |
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仰いだ夕焼け 南の空に |
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未だ還らぬ 一番機 |
四 |
貴様と俺とは 同期の桜 |
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同じ航空隊の 庭に咲く |
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あれほど誓った その日も待たず |
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なぜに死んだか 散ったのか |
五 |
貴様と俺とは 同期の桜 |
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離れ離れに 散ろうとも |
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花の都の 靖国神社 |
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春の梢に 咲いて会おう |
歩兵の本領
一 |
萬朶の櫻か襟の色  花は吉野に嵐吹く |
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大和男子と生まれなば  散兵線の花と散れ |
二 |
尺餘の銃は武器ならず  寸餘の剣何かせんく |
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知らずやここに二千年  鍛へ鍛へし大和魂 |
三 |
軍旗守る武士は  總てその数(すう)二十万 |
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八十餘ヶ所に屯(たむろ)して  武装は解かじ夢にだも |
四 |
千里東西波越へて  我に仇なす國あらば |
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港を出てん輸送船  暫し守れや海の人 |
五 |
敵地に一歩我れ踏めば  軍(いくさ)の主兵はここにあり |
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最後の決は我任務  騎兵砲兵協同(けふどう)せよ |
六 |
アルプス山を踏破せし  歴史は古く雪白し |
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奉天戦の活動は  日本歩兵の華と知れ |
七 |
携帯口糧あるならば  遠く離れて三日四日 |
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曠野千里に亙るとも  散兵線に秩序あり |
八 |
退くことは我知らず  見よや歩兵の操典を |
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歩兵の戦は射撃にて  敵をひるませ其隙に |
九 |
前進前進又前進  肉弾とどく處まで |
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我が一軍の勝敗は  突撃最後の数分時 |
十 |
歩兵の本領茲にあり  ああ勇ましの我兵科 |
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會心の友よさらばいざ  共に励まん我任務 |
麦と兵隊
一 |
徐州徐州と 人馬は進む |
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徐州居よいか 住みよいか |
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洒落た文句に 振り返りゃ |
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お国訛(なま)りの おけさ節 |
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ひげがほほえむ 麦畠 |
二 |
友を背にして 道なき道を |
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行けば戦野は 夜の雨 |
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「すまぬすまぬ」を 背中に聞けば |
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「馬鹿を云うな」と また進む |
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兵の歩みの 頼もしさ |
三 |
腕をたたいて 遥かな空を |
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仰ぐ眸(ひとみ)に 雲が飛ぶ |
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遠く祖国を はなれ来て |
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しみじみ知った 祖国愛 |
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友よ来て見よ あの雲を |
四 |
行けど進めど 麦また麦の |
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波の深さよ 夜の寒さ |
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声を殺して 黙々と |
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影を落として 粛々と |
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兵は徐州へ 前線へ |
海ゆかば
海行(ゆ)かば 水漬(みづ)く屍(かばね) |
山行(ゆか)ば 草生(む)す屍 |
大君(おおきみ)の 辺(へ)にこそ死なめ |
かへりみはせじ |
敵は幾万
一 |
敵(てき)は幾万(いくまん)ありとても |
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すべて烏合(うごう)の勢(せい)なるぞ |
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烏合の勢にあらずとも |
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味方(みかた)に正しき道理(どうり)あり |
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邪(じゃ)はそれ正(せい)に勝(か)ちがたく |
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直(ちょく)は曲(きょく)にぞ勝栗(かちぐり)の |
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堅き心(こころ)の一徹(いってつ)は |
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石(いし)に矢(や)の立(た)つためしあり |
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石に立つ矢のためしあり |
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などて恐(おそ)るる事(こと)やある |
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などてたゆとう事やある |
二 |
風(かぜ)に閃(ひらめ)く連隊旗(れんたいき) |
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記紋(しるし)は昇(のぼ)る朝日子(あさひこ)よ |
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旗(はた)は飛びくる弾丸(だんがん)に |
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破るることこそ誉れ(ほまれ)なれ |
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身(み)は日(ひ)の本(もと)の兵士(つわもの)よ |
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旗(はた)にな愧(は)じそ進め(すすめ)よや |
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斃(たお)るるまでも進めよや |
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裂(さ)かるるまでも進めよや |
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旗にな愧(は)じそ耻(は)じなせそ |
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などて恐るる事やある |
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などてたゆとう事やある |
三 |
破れて逃(に)ぐるは国(くに)の耻(はじ) |
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進みて死(し)ぬるは身(み)の誉(ほま)れ |
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瓦(かわら)となりて残る(のこる)より |
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玉(たま)となりつつ砕け(くだけ)よや |
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畳(たたみ)の上(うえ)にて死ぬことは |
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武士(ぶし)の為(な)すべき道(みち)ならず |
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骸(むくろ)を馬蹄(ばてい)にかけられつ |
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身(み)を野晒(のざらし)になしてこそ |
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世(よ)に武士(もののふ)の義(ぎ)といわめ |
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などて恐るる事やある |
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などてたゆとう事やある |
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露営の歌
勝って来るぞと 勇ましく |
誓つて故郷(くに)を 出たからは |
手柄(てがら)たてずに 死なれよか |
進軍ラツパ 聞くたびに |
瞼(瞼)に浮かぶ 旗の波 |
土も草木も 火と燃える |
果てなき荒野(こうや) 踏みわけて |
進む日の丸 鉄兜 |
馬のたてがみ なでながら |
| あすの生命(いのち)を 誰(だれ)か知る |
愛国行進曲
一 |
見よ東海の空あけて |
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旭日(きょくじつ)高く輝けば |
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天地の正気(せいき)溌剌(はつらつ)と |
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希望は躍る大八洲(おおやしま) |
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おお晴朗の朝雲に |
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聳(そび)ゆる富士の姿こそ |
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金甌(きんおう)無欠揺るぎなき |
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わが日本の誇りなれ |
二 |
起(た)て一系の大君(おおきみ)を |
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光と永久(とわ)に戴(いただき)きて |
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臣民われら皆共に/td> |
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御稜威(みいつ)に副(そ)わん大使命 |
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往(ゆ)け八紘(はっこう)を宇(いえ)となし |
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四海の人を導きて |
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正しき平和うち建てん |
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理想は花と咲き薫る
| 三 |
いま幾度かわが上に |
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試練の嵐哮(たけ)るとも |
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断固と守れその正義 |
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進まん道は一つのみ |
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ああ悠遠の神代(かみよ)より |
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轟(とどろく)く歩調うけつぎて |
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大行進の行く彼方 |
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皇国つねに栄えあれ |
日本陸軍
出征 |
天に代わりて不義を討つ |
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忠勇無双の我が兵は |
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歓呼の声に送られて |
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今ぞ出で立つ父母の国 |
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勝たずば生きて還(かえ)らじと |
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誓う心の勇ましさ |
斥候兵 |
或いは草に伏し隠れ |
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或いは水に飛び入りて |
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万死恐れず敵情を |
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視察し帰る斥候兵 |
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肩に懸(かか)れる一軍の |
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安危はいかに重からん |
工兵 |
道なき道に道をつけ |
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敵の鉄道うち毀(こぼ)ち |
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雨と散りくる弾丸を |
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身に浴びながら橋かけて |
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我が軍渡す工兵の功労何にか譬(たと)うべき |
砲兵 |
鍬(くわ)取る工兵助けつつ |
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銃(つつ)取る歩兵助けつつ |
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敵を沈黙せしめたる |
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我が軍隊の砲弾は |
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放つに当たらぬ方もなく |
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その声天地に轟(とどろ)けり |
歩兵 |
一斉射撃の銃(つつ)先に |
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敵の気力を怯(ひる)ませて |
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鉄条網もものかはと |
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躍り越えたる塁上に |
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立てし誉れの日章旗 |
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みな我が歩兵の働きぞ |
騎兵 |
撃たれて逃げゆく八方の |
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敵を追い伏せ追い散らし |
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全軍残らずうち破る |
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騎兵の任の重ければ |
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我が乗る馬を子のごとく |
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労(いた)わる人もあるぞかし |
輜重兵 |
砲工兵騎の兵強く |
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連戦連捷せしことは |
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百難冒(おか)して輸送する |
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兵糧(ひょうろう)輜重のたまものぞ |
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忘るな一日遅れなば |
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一日たゆとう兵力を |
衛生兵 |
戦地に名誉の負傷して |
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収容せらるる将卒の |
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命と頼むは衛生隊 |
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ひとり味方の兵のみか |
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敵をも隔てぬ同仁の |
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情けよ思えば君の恩 |
凱旋 |
内には至仁の君いまし |
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外には忠武の兵ありて |
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我が手に握りし戦捷の |
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誉れは正義のかちどきぞ |
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謝せよ国民大呼(たいこ)して |
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我が陸軍の勲功(いさおし)を |
勝利(平和) |
戦雲東におさまりて |
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昇る朝日ともろともに |
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輝く仁義の名も高く |
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知らるる亜細亜の日の出国 |
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光めでたく仰がるる |
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時こそ来ぬれいざ励め |
戦友
一 |
ここはお国を何百里(なんびゃくり) |
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離れて遠き満洲(まんしゅう)の |
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赤い夕日に照らされて |
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友は野末(のずえ)の石の下 |
二 |
思えばかなし昨日(きのう)まで |
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真先(まっさき)かけて突進し |
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敵を散々(さんざん)懲(こ)らしたる |
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勇士はここに眠れるか |
三 |
ああ戦(たたかい)の最中(さいちゅう)に |
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隣りに居(お)ったこの友の |
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俄(にわ)かにはたと倒れしを |
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我はおもわず駈け寄って |
四 |
軍律きびしい中なれど |
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これが見捨てて置かりょうか |
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「しっかりせよ」と抱き起し |
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仮繃帯(かりほうたい)も弾丸(たま)の中 |
五 |
折から起る突貫(とっかん)に |
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友はようよう顔あげて |
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「お国の為だかまわずに |
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後(おく)れてくれな」と目に涙 |
六 |
あとに心は残れども |
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残しちゃならぬこの体(からだ) |
我は海の子
一 |
我は海の子白浪の さわぐいそべの松原に |
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煙たなびくとまやこそ 我がなつかしき住家なれ |
二 |
生まれてしほに浴して 浪を子守の歌と聞き |
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千里寄せくる海の氣を 吸ひてわらべとなりにけり |
三 |
高く鼻つくいその香に 不斷の花のかをりあり |
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なぎさの松に吹く風を いみじき樂と我は聞く |
四 |
丈餘のろかい操りて 行手定めぬ浪まくら |
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百尋千尋海の底 遊びなれたる庭廣し |
五 |
幾年こゝにきたへたる 鐵より堅きかひなあり |
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吹く鹽風にKみたる はだは赤銅さながらに |
六 |
浪にたゞよふ氷山も 來らば來れ恐れんや |
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海まき上ぐるたつまきも 起らば起れ驚かじ |
七 |
いで大船を乘出して 我は拾はん海の富 |
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いで軍艦に乘組みて 我は護らん海の國 |
荒鷲の歌
一 |
見たか銀翼この勇姿 日本男児が精込めて |
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作って育てた我が愛機 空の守りは引き受けた |
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くるならきてみろ赤とんぼ ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ |
二 |
誰がつけたか荒鷲の 名にも恥じないこの力 |
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霧も嵐もなんのその 重い爆弾抱え込み |
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南京くらいは一跨ぎ ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ |
三 |
金波銀波の海越えて 雲らぬ月こそわが心 |
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正義の日本知ったかと 今宵また飛ぶ荒鷲よ |
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御苦労しっかり頼んだぜ ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ |
四 |
翼に日の丸乗り組みは 大和魂の持ち主だ |
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敵機はあらましつぶしたが あるなら出てこいおかわりこい |
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プロペラばかりか腕もなる ブンブン荒鷲ブンと飛ぶぞ |
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燃ゆる大空
一 |
燃ゆる大空 気流だ 雲だ |
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騰(あが)るぞ翔けるぞ 迅風(はやて)の如く |
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爆音正しく 高度を持して |
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輝くつばさよ 光華(ひかり)ときそえ |
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航空日本 空ゆくわれら |
二 |
機翼どよもす 嵐だ 雨だ |
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きらめくプロペラ 真先かけて |
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皇国(みくに)に捧ぐる 雄々しき命 |
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無敵のつばさよ 溌剌こぞれ |
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闘志はつきぬ 精鋭われら |
三 |
地上はるかに 南だ北だ |
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攻むるも守るも 縦横無尽 |
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戦闘爆撃 第一線に |
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降魔(ごうま)のつばさよ 電波と奮(ふる)え |
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東亜の空を 制するわれら
| 四 |
空を拓(ひら)かん 希望だ道だ |
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七つの海原 大陸衝(つ)いて |
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文化を進むる 意気高らかに |
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金鵄(きんし)のつばさよ 世界を凌げ |
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国威をになう 若人われら |
ラバウル海軍航空隊
一 |
銀翼連ねて南の前線 揺るがぬ護りの海鷲達が |
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肉弾砕く敵の主力 栄えある我等ラバウル航空隊 |
二 |
数をば恃んで寄せ来る只中 必ず勝つぞと飛び込む時は |
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胸にさした基地の花も にっこり笑うラバウル航空隊 |
| 三 |
海軍精神燃え立つ闘魂 いざ見よ南の輝く太陽 |
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雲に波に敵を破り 轟くその名ラバウル航空隊 |
| 四 |
沈めた敵艦墜とした敵機も 忘れて見つめる夜更けの星は |
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我に語る戦友の御霊 勲は高しラバウル航空隊 |
空の神兵
一 |
藍より蒼き 大空に大空に |
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忽(たちま)ち開く 百千の |
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真白き薔薇の 花模様 |
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見よ落下傘 空に降り |
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見よ落下傘 空を征(ゆ)く |
| |
見よ落下傘 空を征く |
二 |
世紀の華よ 落下傘落下傘 |
| |
その純白に 赤き血を |
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捧げて悔いぬ 奇襲隊 |
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この青空も 敵の空 |
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この山河(やまかわ)も敵の陣 |
| |
この山河も敵の陣 |
三 |
敵撃摧(げきさい)と 舞い降(くだ)る舞い降る |
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まなじり高き つわものの |
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いづくか見ゆる 幼顔(おさながお) |
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ああ純白の 花負いて |
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ああ青雲に 花負いて |
| |
ああ青雲に 花負いて |
四 |
讃(たた)えよ空の 神兵を神兵を |
| |
肉弾粉と 砕くとも |
| |
撃ちてし止まぬ 大和魂(だま) |
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我が丈夫(ますらお)は 天降(あまくだ)る |
| |
我が皇軍は 天降る |
| |
我が皇軍は 天降る |
ラバウル小唄
一 |
さらばラバウルよ 又来るまでは |
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しばし別れの 涙がにじむ |
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恋しなつかし あの島見れば |
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椰子の葉かげに 十字星 |
二 |
船は出てゆく 港の沖へ |
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愛しあの娘の うちふるハンカチ |
| |
声をしのんで 心で泣いて |
| |
両手合わせて ありがとう |
三 |
波のしぶきで 眠れぬ夜は |
| |
語りあかそよ デッキの上で |
| |
星がまたたく あの星見れば |
| |
くわえ煙草も ほろにがい |
四 |
赤い夕陽が 波間に沈む |
| |
果ては何処(いずこ)ぞ 水平線よ |
| |
今日も遙々(はるばる) 南洋航路 |
| |
男船乗り かもめ鳥 |
五 |
さすが男と あの娘は言うた |
| |
燃ゆる思いを マストに掲げ |
| |
揺れる心は あこがれ遥か |
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今日は赤道 椰子の島 |
雪の進軍
一 |
雪の進軍氷を踏んで |
| |
どれが河やら道さえ知れず |
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馬は斃(たお)れる 捨ててもおけず |
| |
ここは何処(いずく)ぞ皆敵の国 |
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ままよ大胆一服やれば |
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頼み少なや煙草が二本 |
二 |
焼かぬ乾魚(ひもの)に半煮(はんに)え飯に |
| |
なまじ生命(いのち)のあるそのうちは |
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こらえ切れない寒さの焚火 |
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煙(けむ)いはずだよ生木が燻(いぶ)る |
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渋い顔して功名噺(ばなし) |
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「すい」というのは梅干一つ |
三 |
着の身着のまま気楽な臥所(ふしど) |
| |
背嚢枕に外套かぶりゃ |
| |
背(せな)の温(ぬく)みで雪解けかかる |
| |
夜具の黍殻(きびがら)しっぽり濡れて |
| |
結びかねたる露営の夢を |
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月は冷たく顔覗き込む |
四 |
命捧げて出てきた身ゆえ |
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死ぬる覚悟で吶喊(とっかん)すれど |
| |
武運拙(つたな)く討死にせねば |
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義理にからめた恤兵真綿(じゅっぺいまわた) |
| |
そろりそろりと頚(くび)締めかかる |
| |
どうせ生きては還らぬ積り |
勇敢なる水兵
一 |
煙も見えず 雲もなく |
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風も起こらず 浪立たず |
|
鏡のごとき 黄海は |
|
曇りそめたり 時の間に |
二 |
空に知られぬ 雷(いかずち)か |
|
浪にきらめく 稲妻か |
|
煙は空を 立ちこめて |
|
天つ日影も 色暗し |
三 |
戦い今か たけなわに |
|
務め尽くせる ますらおの |
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尊き血もて 甲板(かんぱん)は |
|
から紅(くれない)に 飾られつ |
四 |
弾丸のくだけの 飛び散りて |
|
数多(あまた)の傷を 身に負えど |
|
その玉の緒を 勇気もて |
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繁(つな)ぎ留めたる 水兵は |
五 |
真近く立てる 副長を |
|
痛むまなこに 見とめけん |
|
彼は叫びぬ 声高に |
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「まだ沈まずや 定遠(ていえん)は」 |
六 |
副長の眼は うるおえり |
|
されども声は 勇ましく |
|
「心安かれ 定遠(ていえん)は |
|
戦い難(かた)く なしはてき」 |
七 |
聞きえし彼は 嬉しげに |
|
最後の微笑(えみ)を もらしつつ |
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「いかに仇(かたき)を 討ちてよ」と |
|
いうほどもなく 息絶えぬ |
八 |
「まだ沈まずや 定遠は」 |
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その言(こと)の葉(は)は 短きも |
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皇国(みくに)を思う 国民(くにたみ)の/td> |
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心に永く しるされん |
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